糖質制限食を実践される時のご注意
糖尿病関係の薬を服用されている方
糖質制限食実践によりリアルタイムに血糖値が改善します。このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、減薬しないと低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。
一方、薬を使用してない糖尿人やメタボ人は、低血糖の心配はほとんどないので、自力で糖質制限食を実践して糖尿病やメタボ改善を目指していただけば幸いです。内服薬やインスリン注射なしの糖尿人が糖質制限食を実践すると、食後高血糖は改善しますが、低血糖にはなりません。血糖値が正常範囲である程度下がると、肝臓でアミノ酸・乳酸・グリセロール(脂肪の分解物)などから、ブドウ糖を作るからです。これを糖新生といいます。
塩分について
塩分に関しては、スーパー糖質制限食の場合は、今まで通りで特に制限の必要はありません。
「スーパー糖質制限+塩分制限」だと、塩分不足で身体がだるかったり、集中力が低下することがあるので注意が必要です。
膵炎、肝硬変、鎖脂肪酸代謝異常症・尿素サイクル異常症の方
診断基準を満たす膵炎がある場合、肝硬変の場合、そして長鎖脂肪酸代謝異常症・尿素サイクル異常症は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。
糖質制限食は相対的に高脂肪食になるので、診断基準を満たしている膵炎の患者さんには適応とならないのです。進行した肝硬変では、ブドウ糖を作る能力が低下していて、低血糖の恐れがあるので適応となりません。長鎖脂肪酸代謝異常症では、肉や魚などに含まれる長鎖脂肪酸が上手く利用できないので、適応となりません。尿素サイクル異常症もまれな疾患ですが、タンパク質の代謝に問題があるので高タンパク食である糖質制限食は向きません。
腎臓の疾患のある方
腎機能に関して、日本腎臓病学会編「CKD診療ガイド2018」において、eGFR60ml/分以上あれば顕性たんぱく尿の段階でも、たんぱく質は過剰な摂取をしないという表現となっていて、制限という記載はなしです。従いまして、糖尿病腎症第3期でも、eGFR60ml/分以上なら、糖質制限食OKです。
また、米国糖尿病学会(ADA)はPosition Statement on Nutrition Therapy(栄養療法に関する声明)Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版において、糖尿病腎症患者に対する蛋白質制限の意義を明確に否定しました。根拠はランク(A)ですので、信頼度の高いRCT研究論文に基づく見解です。今後は、糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の場合も、患者さんとよく相談して、糖質制限食を実践するか否か、個別に対応することとなります。なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止して頂ければ幸いです。